中国タルコフスキー/【映画】黄色い大地

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中国映画です。

最初に見たのは、昔にアートシネマが流行った時なんですけど、改めて素晴らしいと思いました。
ストーリー、音楽、カメラワーク、映像、カット割り、演出、その他どういう側面で見てもまったく隙がない。完璧。

描かれるのは中国の国共合作時の、変貌する中国のイデオロギーとまだまだ土着的で古い慣習の残る農村との相克。当時の中国の状況については全く詳しくないけど、共産主義という当時の理想が果たして全中国的に良かったのか、ということを我々に問いかけてくる作品です。

オハナシはある共産党員の男が政策を世に広めるための宣伝歌を地方から採取しようと、延安から黄河上流の貧しい農村を訪れ、そこで本当に貧しい農家にホームステイ(?)させてもらうことになります。そこに住む娘が彼の思想に共感し、入党したいと申し出ますが、彼はその旨を党に伝えて戻ってくるからと言い残し去ります。しかしその娘は待ちきれず、ひとりで黄河を渡ろうとする・・・

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という書いてしまえばなんてことない話なのですが、その農村地帯の慣習や風景の描き方(水くみ、売買婚、雨乞いの儀式など)、党員の何気ない行動や言葉が彼女に共感を与えてゆく過程、ほのかな恋心、いろいろなところで挿入される「歌」の数々が圧倒的な説得力を持って迫ってきます。

そして何より感動するのは「不毛」としかいいようがない黄色い大地をひたすら描写してゆく力強いカメラワーク。当時の農村の有りようを強烈なインパクトで見せることに成功しています。僕はこの映像が何より素晴らしいと思いました。まさしく中国版タルコフスキー映画と言ってもいいかもしれない。映像を撮ったのは後に「初恋の来た道」などを監督することになるチャン・イーモウ。

全体的に、中国というのはいろんな意味で本当に「果てしのない国」(上手く言えないけど)なんだ、ということを問いかけているように感じられました。上海で飲茶食って喜んでるような僕に語る資格は全くないでしょうけども。

黄色い大地[レンタル落ち] [DVD]もしごらんになっていない方がいらっしゃればぜひ機会があれば見てみてください。シリアスな映画ですが、党員の男が村上春樹を格好良くしたような感じなのが唯一ニヤリとします(笑)。

※上記画像は福岡市アジアアーカイブライブラリよりお借りしました。